◇滝見と山登り◇
日光市
西沢(本沢)
詰めて高薙山

高薙山:2180.7m
                    



2009年7月20日 訪問

単独
(時間は参考にしない事)
                           
 爺の持ってる資料から、西沢には30m大滝があると知って一昨年足を痛めた(骨折時ではない)折り、偵察がてら少しの距離を遡行した事がある.標高1650m近くに12m近い滝を見て、30m大滝はこの上にあると思い込んでいた.あちこち行きたい所が沢山あり、気にはかけていたが中々足を向ける事が出来なかった.

 今年の天候は不順で、梅雨が明けたと思ったら良い天気が続かない.2、3日好天になったら渓泊まりで奥深い沢に行こうと計画はしているのだが、その機会が巡って来ない.悶々としクサッていた時、明日は天気が何とか持ちそうだ(但し午後から雨模様)という天気予報に、よしッ西沢を確認に行こう! と決め、出掛ける事にした.

 前日も、雨降られ覚悟で野門沢の中流部を歩いてきたので、やや足が重い.それでも遡行距離はそんなに長くないので、ゆっくり歩き調子を整える様にすればよいのだ(と思う).ゲート前に車を駐め、すぐに8m位の滑滝がある.水が岩と同化してしまい、メリハリなものは撮れないと思ったが沢に下りフイルムに収めて、舗装の林道に登り返しやがてガレが大量に積もっている沢を歩き始める. 前回来た時より遙かに多くのガレが堆積していたのには驚いた.
■写真左
橋から近く簡単に見られる8m滝
8:00


■写真右
ガレが押し寄せ積もった堰堤
カーソル当てると一昨年の光景
■写真左
埋もれてしまったゴルジュ
9:20

■写真右
ゴルジュを通過し上流から見る
 最終2段堰堤を過ぎ、ゴルジュに入ってどこか景色が違うと感じた.ゴルジュには数段の滝が連続していた筈で、その内の中間より奥ではシャワークライムしなければ通過できない滝もあった.しかし、ゴルジュ内はガレで埋もれ多くの滝は簡単に通過できる.シャワークライムした滝は2m位の小さな滝に変身していた.
 
2−3段のこれもすっかり形を変えた滑滝を越えゴルジュの出口には左からルンゼ状の沢が、細い滝をかけ合流している.大きな枯れ木が沢をまたいでいた.左岸は大きく崩れ、新しい大小の岩が積み重なっている.まだ崩壊は落ち着かない様で、時折カラカラと音を立て小石が落ちてくる.そこを横断する時はとても緊張した.
 そこを過ぎると前方に、形の良い斜瀑が見える.この辺りはやや平らな場所で(まばらだが)草木の緑が多かった筈.それも何処かへ消え失せていた.

■写真左
12m滝(これからは20m滝)
9:55



■写真右
滝の上
 2m程の前衛小滝は半分程ガレキに埋まり、その代わり奥の滝は12m程だったが滝下のガレが消えて、2−3m位落差が増えていた(笑)水の力は凄い物で、想像以上の力があるのだ.時間をかけ撮影し、滝の上に登る算段をした.
 右の壁はそれ程急傾斜でもなく、足掛かりも豊富だ.ただ、岩は剥がれやすいので注意深く6−7m程登り、灌木帯に入る.そのまま直登していくと、滝はさらに傾斜を緩め、滑状に続いていて5−6mの落差を造っていた.従ってこの滝は20mクラスとなった(笑)
 
滝上に登ると、灌木帯から踏み後が延びてきている.どこか巻道があるらしい.帰りはそっちを通ってみよう.滝の上流は平凡になり、100m程で左に屈曲していた.大小の岩と流木でやや荒れ模様.水も少なくなり二俣となったが、5:1位で右は急勾配のガレ沢となっていた.資料では1:1の二俣がある筈だが、生憎資料は車の中に置いてきてしまった.
 樹林内の左沢に水流を追って行くと、3−4mの小滝があり前方に壁が見えた.15m程の涸れ滝は僅かに水を滴らせて行く手を塞いでいる.「これあ〜、沢を間違えたな」独り言が思わず口から出て、少し早い昼飯にした.滝下の水は冷たくて美味しい.

■写真左
15m涸滝
10:50


■写真右
いざ高薙山へ!
中央に見える崖が15m涸滝

11:30
 時間も早いし、さてどうしたものか・・・と、思案.地図を見るとこの沢形上に「高薙山」というのがある.登山道の表記はないが、尾根に踏み後ぐらいはあるだろう.その道の人は結構いるし.と、ロクな計画も無しにこの沢を詰める事にした.(計画がないと言っても、山に登るのが目的ではないから、いつでもどこからでも引き返せるのである) 左岸は崖でダメ、滝直登なんぞ落ちる為に登る様なもの.右岸の笹藪を登り滝上に出る事にする.
 
案の定、沢はガレ沢で急峻.右岸に尾根を挟んでやはりガレ沢があるが、こちらは草付きで(急だが)やや安心.ただ、ヒナタなので沢と違い熱い.たちまち汗が噴き出してくる.この後、水なんぞないだろうから節約しなくては、等と思いながらガレ沢を直登してゆく.
 標高1900m付近で左岸尾根を回り込むと、ガレ沢が樹林に消えている.位置を確認してみると、このガレ沢はあの涸れ滝上流のものではなく、途中から派生しているものだった.樹林内に入るが尾根形に期待した踏み後やテープはみつからない.樹林内の藪は薄く、結構快適に登って行く.

■写真左
ガレ沢


■写真右
派生ガレ沢のEND
12:15
■写真左
テープ発見
2020m付近

13:00



■写真右
ザックをデポした鞍部から
 笹藪も密になったり薄くなったりしてくるが、鹿道(と、思う)を辿ると藪は気にならない.少しずつ傾斜を強めていく尾根には倒木が多くなり、生えてる木も太くない.良く見るとあちこちに苔の生えている切り株がある.昔、この山域一帯が伐採され鉱山などに利用されたのか.
 
突然道形みたいなものが出現し、2m程の高さに赤いテープがあった.初めて見たが、、辺りを見回しても他にテープは見当たらないので、どっちからどっちへ誘導しているのか判らない.此処はテープに頼らず、尾根を登って行く.
 
2050m辺りで尾根が合流するが、シャクナゲが出てきた.大きな岩があり、その下を回り込む様にしてトラバース気味に藪を避けながら尾根のちょっとした鞍部に出る.南東方向が開けていて霞みがちだが、遠くの山もまあまあ見える.が、目の前にはシャクナゲとコメツガの幼木が”ここからは通さんぞ!”とばかりに、密生している.
 右方向に踏み後っぽいものが付いているので、少し探ってみたが踏み後(らしきもの)はすぐに消えていた.戻って、覚悟し藪に突入する.が、あっけなく押し戻される.次は潜ってみたがザックと三脚が引っ掛かり、前に進めない.此処から戻ろうか?と思ったが、目の前の手が届きそうな所にピークが見えている.ウエストポーチに水と非常食を詰め、GPSとデジカメだけを持ってザックは置いて行く事にした.目印は・・・ゲゲッ、緑色のタオルかよ.見えるかあこんなの.ま、取り敢えず木の高い部分に縛り付け、GPSの位置を再確認して藪潜りの開始だ.
■写真左
藪・・・です


■写真右
藪尾根の様子
 藪の中でジタバタし、筆舌に尽くしがたい呪いの言葉を吐きながら(笑)潜って登っていく.気のせいかも知れないが、シャクナゲ藪の下には踏み後の様になっている場所が幾つかあった.尾根の2130m付近、藪の中にニョキッと岩が突き出ている.良い展望台の様だが、ゆっくりしてる暇もないので、再び藪の中に入って行こうとし、低い体制をとったら展望岩(を過ぎた上から見て)の右側に、ハッキリと樹林内に入っていく踏み後があった.背の低いコメツガ(らしい)の樹林帯で展望もないが藪もない.緩やかな斜面を適当に登って行き、少し開けた笹原を過ぎて、南西(ちょっと南寄り)からの稜線に飛び出した. 
■写真左
展望に良さそうな岩
13:40


■写真右
刈込湖?
■写真左
尾根飛び出し.白い空き缶が見える
13:50



■写真右
三角点
 左に踏み後があり10m位離れた所に白っぽい空き缶が、木に引っ掛けてある.何かの目印だろうか.山頂はすぐ判った.樹林に囲まれて展望はあまりない.木々には4個位の手製標識が架けられてあった.一枚は、三角点の上に乗っかっている.沢山の小さな虫が顔の回りを飛び回って、煩わしい.ゆっくり出来る時間でもないので、適当にその辺を撮影し帰る事にした.
 
帰路、笹原迄は順調に下った.そこでGPSを確認し、コメツガの樹林内に入って行く.調子よく下りていき、途中で「あれ?登ってきたときより、傾斜がきつくなってないか?」と、気が付いた.地図とGPSで確認すると、少し南寄りにずれていた.
 
ガスが少し濃くなり、樹林の中とあっては全く見通しが効かず、此処はGPS頼みで、少し登り返し修正を行った.何しろ、置いてきたザックを回収しなければならない.それ程問題はなく極激藪尾根に戻り、今度は潜るのではなく上を泳ぐ様にシャクナゲに身を任せながら下って行き、無事ザックを回収する事が出来た.
 しかしドジな性格は天性ですぐに息を吹き返す.ザックを担いで下り始めるとすぐに、東南東尾根に引き込まれてしまった.倒木や切り株、登って来た時と同じ様な針葉樹林帯の光景の中をグングン下りてしまった.前方に沢形が見え、これはおかしい!と気が付いた時は後のカーニバル.トラバースして修正しようとしたが、間に急なガレ沢を挟み笹藪もきつい.(地図を見るとこのガレ沢は涸滝に合流してるようだ)
 
あせってもしょうがないのでガレ沢の傾斜が緩くなるまで、右岸を下りていき1950m付近からガレ沢の中を下って行く.此処から北にトラバースすれば登ってきたルートに復帰出来るのだが、面倒だからこのまま下降してあの15m涸滝に出る事にした.そこでは冷たい水にありつけるだろう.そこからは難所といえば、20m滝の巻が残っているだけだ.30m大滝は此処にはなく、爺が持ってる資料はどうやらこの沢ではなかった様だ.(2011/11/20再編集)