◇山登り◇

那須塩原市
大佐飛山
おおさびやま:1908m

                  



2012年 7月 16日 訪問

爺 & yuki
(時間やルートは参考にしない事)

昨年一度横川から挑戦したが見事に失敗
はこちらで

              
  この山の遠さは、藪の長さによるものだと感じる.笹、石楠花などの灌木、針葉樹系、と容赦なく頂を目指す者達の精神力を押し潰し破壊しようとする.「大佐飛山山頂」の有志山名板を見た時でも、登り着いたという(喜びとか嬉しさなど)感慨が全く湧いて来なかった.頂が笹藪と樹林に囲まれ眺望がないのと.藪との格闘で疲れ果て限界を超えてしまっているせいかも知れない.こんな山によくぞ来られたもんだ、来る気になったもんだ.

 前日の日曜日とその前の土曜日に1泊2日でこの山に登ろうと計画をしていた.木の俣川を4時間程遡行し、途中左から合流する急な涸沢(多分上流には水がある)を登って藪漕ぎを出来るだけ少なくし、一日目は大佐飛山から東北に延びる尾根の出来るだけ山頂に近い所でテン泊する.翌日、山頂を踏み大長山〜黒滝山を帰路に使うというものだった.土曜日の朝早く、天気は雨模様で通り過ぎた熊川や蛇尾川は増水し茶色く濁っていた.板室温泉への道路を橋から見た木の俣川は何故か僅かに増水しているだけで水は綺麗であった.しかし、雨は降ってくるのでこれでは中止するしかない.

 さて悶々と過ごす日曜日、仕事もロクに手につかず「どーだッ 明日黒滝から大佐飛に行ってみっか? 駄目ならどっからだって戻れば良いんだからして」、「良し、偵察モドキだね」と簡単に決まってしまった(まあ、いつもこんな調子だけど(笑))  登山口出発は3:45 (黒滝山までは山名板だけで省略)

 ※2012/12/2 修正追記   ※2014/5/6 画像を大きいサイズに入れ替え若干修正

新登山口〜三石山〜サル山〜山藤山〜河下山〜黒滝山〜西村山〜大長山〜大佐飛山〜名無山〜瓢箪峠〜塩那道路〜板室ゲート



那須見台からの眺望 中々の光景


那須見台 5:35


刈り払われてる登山道


山藤山 山名板は届かない位置にある


西村山への分岐から少しで黒滝山の山頂


黒滝山からは雲海が


黒滝山 6:45  朝食後出発7:25



 黒滝山で朝食を摂り少し戻って西に向かって踏み跡を辿るが、僅かでとぎれとぎれになる.藪は覚悟の上だからそのまま適当に進むと、リボンやテープがある事に気づいた.だからといって、それらを確認しながら歩いていては、時間が喰われてしまう.緩く下って沢形(大巻川右俣源頭)には水が所々水が溜まっていたがこれは雨水かも知れない.沢を横断すると、笹藪の中の登りになる.踏み跡はないので、倒木の無いところ、藪が薄いと思われる所を登っていった.
 樹林が突然切れ、まるでスキー場の様な笹斜面が前方に現われた.胸ほどの笹はまだ濡れていて此処まで歩いてかいた汗の身体に心地よい.yukiは斜面に向かって右側の樹林近くを登っている.爺は、踏み跡と藪の薄さを期待して左の灌木帯に取り付くが、幼木の枝が笹藪にプラスして余計厳しい.トラバース気味に右側の樹林帯へ移動するが、多少藪反発が緩くなった程度であまり状況は変わらない.面倒臭いから直登するが、平泳ぎスタイルは結構はかどった.


黒滝山から西村山へ 踏み跡は消えるがリボンが随所にある
※テープリボンが多すぎるが殆どは冬用


西村山直下の笹斜面


笹斜面の中、振り返ると高原山が見えるが、ゆっくり観賞してる余裕はない


西村山山頂 8:10



 斜面の半分まで登った辺り、yukiの姿はもう見えない.何とか西村山の肩に着いた時、yukiは既に頂上だった.「結構きついわなあ」「思ったより厳しいわなあ」と苦笑しながら水分補給.此処でバテたらこの先に行って戻れない.バカ親子揃って遭難騒ぎになってしまう.が、「よしッ行くか!」と気持を奮い立たせ「次は大長山だな」水を此処にデポし帰りに備える.此処からの尾根歩きは想像していたより楽だった.随所に”オアシス”の様な藪の切れ目があり、鹿道も続いていて道程は捗った.

 但し、大長山への登りに入ると再び背丈程の藪になり、倒木と低く延びる枝が輪をかけてくる.我慢の辛い登りとなるが、これは長く続かず僅かの体力消耗で大長山頂上に着いた.


西村山からは笹の下に踏み跡もあり


シャクナゲの花と新芽、見るには良いが通過は厳しい


オアシス
”オアシス”:烏ヶ森さんが今春訪れた際名付けた様だが正に言い得て妙.水があればテン場にもなりそうな(松系)樹林帯.主に稜線の西側斜面

 この様な場所が続き、これは楽勝!、、と、錯覚してしまう


木の間から眺望があり、気分を少し和らげてくれる


大長山への登りは笹斜面 矢印が yuki


大長山 10:05


大長山からも笹、灌木など藪が続く これからは精神力との戦いでもある様
 大長山(標高1,866m)山頂も藪と樹林に覆われ概ね展望はない.休憩していると蝿や小さな虫がワーーンとくっついてくる.何ともやっかいで落ち着かない.休憩もそこそこに進路を(北に)決め藪に突入していく.この辺りは広く尾根形がはっきりせず、笹藪は胸上程だが、抵抗感はそれ程でもない.目を凝らすと何となくルートが見え、足元に踏み跡の様な物が”感じられる”.1850mピークで東北よりに出ると樹林から一瞬解放され、前方にこれから行こうとする大佐飛山が見えた.ここの足元にはシャクナゲ、松系の幼木がびっしり覆っている.風景を少しコンデジに納め、シャクナゲの隙間へしゃにむに身体をねじ込んでいく.

 空や前方が見えず、左右見渡せず、同じ様な緩い下り斜面で、コンパスや地図がなかったら、此処は確実に迷ってしまう.我々も執拗な灌木藪に手こずり、少しでも楽な薄い所を選んで歩いた為、東側へと進んでしまったが、此処では大したロスにならず稜線中央に復帰できた.シャクナゲは蕾状のものもあれば、咲き終えたようなものもあって不思議.が、花をゆっくり眺めてる余裕はない.コンデジを花に向ける気分にさえ、到底なれない.辛い体力消耗と時間の消費が続く.所々にポッカリと藪のない空間があるが、概ね倒木のある場所だった.それでも、そこに立つと広く見渡せ、特に雲海に浮かぶ那須連山が印象的だった.



目指す大佐飛山が見えた おおっもうすぐだッ・・・
と、 どっか おかしくなってきたか(笑)


倒木の上で休憩 那須のお山が雲海の上


残雪期には此処の光景が 「雪の回廊」 と、呼ばれるらしい


茶臼岳遠望
 1813mPの僅かな登りでは、(松系の)低木が地を這う様に枝を延ばして行く手を阻んでいる.まずyukiが中央突破を試みるが押し戻される.爺は西よりの斜面から回り込もうと思ったが、シャクナゲ他の密藪で困難.やむを得ず東の笹斜面に出る.これが又多少の抵抗感はあるが歩き易い.なるべく稜線と並行に進む様に胸上の笹藪を漕いでいくと、「アッ」と言って突然yukiの姿が見えなくなった.何か冗談でもやっているのか?と思ったが、下から「沢形に落ちちゃったよ〜」「何!怪我はないか?」「底が柔らかな土なので大丈夫だよ」、ふう〜一安心(※1).
 
 良く見渡してみると、下の方に沢形がありこっちの笹藪に消えている.「上がるのが大変だから少し下るね」と、下から声が聞こえたので、爺もちょっと上に歩き高さが低い方から沢形に下りて沢を下ると、すぐに二俣になっていた.沢形の開けている所で休憩しエネルギーを補給しながら、水が少なくなっているのがやや心配だね〜とボトルを確認.水のない涸れ沢だったが沢床が湿っぽい.水はないかと少し下降してみたが、結局水はなく2−3m程の涸滝があり、巻いて下りるのも面倒なのでそのまま二俣迄引き返した(この間30分程貴重な時間ロス).


行く手を阻む灌木


通過が嫌になり、やや東側の笹藪に逃げたら・・・


沢形に yuki が、落ちた (矢印) 笹が覆い被さり全く判らない



シャクナゲがあるけど背が低く疎らなので歩くのに支障はない
しかし、此処は稜線から大きく外れてしまっている. 右を登って行くと1813P北東にある1810P北東斜面で
まっすぐ行くと先程通った笹斜面に戻ってしまうのだが、この時は全く判っておらず歩き易さにルンルン気分で直進してしまう
 迷所
1813Pから尾根が北東に分岐しているが、実はこの頃それ程濃くはないけどガスが出ていて、大佐飛山は見えなくなっていた.沢形にyukiが落ちた所から北に向かって緩く登り1810Pを越えた所で、
右手に大きい山容が近く見えた.これは1675Pだったのだが、大佐飛山と思ってしまった.すると、今いる所は1813Pから北西に少し下った辺りと信じ込んでしまったのだ.目の前の斜面はやや急になるので、右へ登る様にトラバースすれば稜線だと思い、綺麗に一回転した訳である.
 (1813Pの北東)ピークに出て、いよいよ大佐飛山への稜線歩きになる(筈であった).地図ではこのピークを南西に下り尾根分岐を北西に進むべきであったのに、、、やや広い尾根を下りて爺が「樹幹の向こうに山がこんもり見えるなぁ、あれが大佐飛山か?」と言ってしまったもんだから”尾根が続き向こうに山が見えればそれは大佐飛山だ」とその時は信じてしった.トラバース気味にあまり下降しないで右へ行けば(大佐飛の)稜線に乗る事が出来るぞ” と地図係のyuki.
 
 ルンルン気分で
右へ右へとやや登り気味にトラバースをしていくと開かれた笹原に出た.ん!何か見た事がある様な・・・そんな思いも枯頭をよぎったが、笹原を登って樹林帯に着くがこれがどうしようもない灌木藪.突然yukiが「あれッ戻ってる!」何と、さっき来た笹原にいるのだ.もう一度(1813Pの北東)ピークに登り返し、同じように下降してみたが、、、これが間違っていた.コンパスをあてGPSを確認し進んでいるのに、コンパスは180度逆を指している.しかし、目の前には「大佐飛山」が見えてるではないか? しかし、その先に進むと斜面は更に急になってきた.「やっぱりおかしい.一旦、ピークに上がるよ」「わかった!」

 再び(1813Pの北東)ピークに登って今度は忠実にコンパス通りに下降すると尾根分岐に出て赤いテープがあった.何という事か、1時間強のタイムロスをしてしまった.体力も限界にきている.水も残り少ない.時間ロスをした事もふまえて爺が提案した.今、此処から戻るか(大佐飛山の)頂上を踏んで瓢箪峠に出るか?瓢箪峠も水場も判っている.途中の難関名無山もある程度周知.「水場もある、ルートも判るとして、塩那のゲートから車まで遠いぜ.どーすんのよ?」 「家に一人いるじゃないか.nobにも参加してもらおうぜ.昨年瓢箪峠で携帯が繋がるのは確認済みだからさ」「来てくれっかなぁ」「我が家は家族愛に育まれてんだよ」「けっ、都合の良い家族愛だね.しかし、遭難捜索隊に呼ばれるよりいいか 良しッ頂上だ」


大佐飛山への登り


大佐飛山 山頂 疲れた〜 14:50
この山域、いろいろなバリエーションルートでYoshiさんが登っている.とても、真似できない  勢い、元気が出て笹藪の薄い所や鹿道を拾いながら上を目指した.藪は所々厳しいがさほどではなく、細尾根に出るとハッキリした鹿道があり歩き易い.頂上直下で笹と灌木の混合藪が出てくるがyukiはそのまま突進していく.爺はここで右の斜面に下りてみた.ここはヒツ沢の源頭にあたる場所だ(本流かどうかは判らない)藪はこれまでの所よりやや薄い感じで丈も腰程度.その北側の尾根形も似た様なもの.当初の一泊二日山行計画では此処に登ってくる筈だったので藪は(西村、大長のそれに比較して)厳しくないだろうとの判断は正しかった.
 
 大佐飛山の頂上に着いた時、yukiは先に着いて休んでいた.三角点を2人で探したが見つける事は出来なかった.爺はあまりそういうことに拘らないので、少し休憩して名無山に向け下降を始める.疎林の笹斜面に出た時、笹の中を誰かが歩いた様な感じを受けた.笹の葉がひっくり返ったり踏まれた道筋になっていたからである.熊?と思ったが良く見るとリボンのある場所を忠実に下りているので、昨日か今日か、割と新しい登山客のものだろうと思った.yukiに話したらふーーん、来る奴いるのかね、、で返された.彼にとってはそんな事より頭の中は水の事ばかりらしい.(ふむ、納得)


名無し山へ向かう途中振り返る


名無し山 山頂 18:00


名無し山 下降鞍部手前から大佐飛山、大長山(右) 
 名無山への登りに入ると消耗しきった身体には極めてきつかった.10m登っては笹藪の中に倒れ込み、又10m登っては倒木を枕に寝込む(笑).歩ているより休憩時間の方が長く、とにかく普通より遙かに時間がかかってその(名無山)頂上は永遠と思える程遠かった.何とか頂上につ着き殆ど休憩せずに今度は急下降だ.直線的に付けられた踏み跡は笹に隠れているが、藪よりは良い.しかし極限を超えてしまった足腰で地面を強く踏む事は出来ず、何度転んだ事か.それでも重力任せの下降は楽でこのルートは時間通りに下りられた.

 1622P手前の鞍部に下りて峠へ続く踏み跡を歩きながら水場を示す標識を探すが見つからない.もう乾きで我慢できないyukiは「水場は最上流の二俣だったよね」と言い残したと思うと、さっさとそっちへ向かい笹藪漕ぎで下降しはじめる.薄暗くなりはじめた樹林内で水場目指して藪漕ぎをする姿は鬼気迫るものがあるが、水の音を聞き転げる様に沢に下りて水の流れ落ちる小滝を見た時、初めて大佐飛山の頂上を踏んだという不思議な喜びが湧いてきた.

 水を汲みどれ位飲んだろうか.頭から水を何度も被った.ほてった身体を拭いた.これこそ生き返ったと言う瞬間だろう.yukiはお湯を沸かしている.カップラーメンを食べるのだという.一体此処でどれ位の時間を費やすのか想像出来なかった.実際、”暗くなる前に瓢箪峠”の目標はとうに忘れ去られ、今、目の前にあるオアシスの休息に身体を浸している.帰着時間の焦りなんて何処吹く風.ヘッデンの明かりと大蛇尾川源流の水の優しい音色だけが時を刻んでいるようだった.(恐らく2時間位そこにいた(笑))


 因みに水場19:00 瓢箪峠22:00
 後は延々と塩那道路を歩き続けるのでした(笑)

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当レポは
写真撮影だったり適当に歩いたりで、時間やルートは参考になりません.
仮に当レポを見て行かれる場合は予め情報を収集していただき、計画を
充分に立ててから実行して下さい.