◇滝見少しと山登り◇
日光市(湯西川)
栗山沢
(上流左俣)と明神ヶ岳

みょうじんがたけ:1594m

                    



2012年4月15日 訪問


(時間は参考にしない事)
                           
 湯西川に来たのは昨年秋以来だが、工事中だったダムが完成した様で水が溜まっていた.そう言えばこの辺りにダムは一体いくつあるのだろう.五十里、川治、八汐、黒部、川俣・・・凄いなあ..建造費も莫大なもんだろうが維持費もハンパぢゃないだろうに.


 栗山沢は湯西川右岸支沢の中で最も気になっていた沢だ.中流域は長く穏やからしいが、上流は険しく大きな滝こそないものの綺麗な滝が多く、その遡行もかなり大変だと聞く.数年前から計画はしていたが、出合い近くに(ダム工事関連事業の)大きな橋の建設現場になっていて入り口に仮囲いがなされ警備員が配置されていたので、(小心者の爺には)なかなか実行に移せなかった.


 湯西川ダムも完成した様で、清流の流はやや碧く色をつけた湖水に変わり、栗山沢入り口には大きな一本の柱で支えられるT字の橋が出来ていた.橋を渡り新しく出来た道路の空きスペースに車を駐め、樹林帯の中を下降して沢に下りるが出合いからどのくらい上流かは判らない.冷たく綺麗な水が勢いよく流れている.

■写真左
湯西川ダム湖
7:35


■写真右
栗山沢に架かる橋
■写真左
本流小滝


■写真右
右支沢の連瀑
 遡行を開始するとすぐにゴルジュっぽくなり右から滝をかけて沢が合流している.見えるところ・・・3段で15m位、、、かな.上の方を覗いてみたい衝動にかられるが何とかPASS.右、左と徒渉を繰り返しゴルジュを抜ける.その上は穏やかになり両岸も平らな樹林帯となって歩きやすい.所々に踏み跡もあり炭焼窯跡も幾つか見られた.間もなく二俣に着いたがそこにはモノレールが残されていて左俣右岸に伸びていた.レールは錆びていて暫く使われていない様だった.

 今日は風もなく暖かい.出る時は寒いのでセーターを着込み薄いジャケットを羽織ってきたのだが少し汗をかいてしまった.ジャケットを脱ぎザックに入れて水を飲む.小さなクッキーをかじり地図を広げた.右俣の資料はあるので概ねの事は判っているが左俣の情報はない.左と右の水量差はおよそ1:3.計画では右俣を探索する予定だったが、取り敢えず左俣を見てみよう.

 二俣から左に入りすぐゴルジュになり又二俣(2:1)になっていた.右には二段の滑滝がある.左は極端に狭くなっている間を水が滑り落ちている.左の水流の中を遡っていくと、渓を残雪が覆い尽くしその向こうに形の良い滝が見えている.踏み抜かない様注意深く残雪の上を歩き近づいて行くと、下から見る滝は10mあるかないか.数枚撮影し、この上に行けるかどうか周囲を見てみたが崖で爺には到底無理.滝の両脇はスタンスが豊富に見えるがこちらに傾斜しているので、これも技術の乏しい爺に直登は無理.簡単に諦め引き返すが、このミニゴルジュを下りるのは結構辛かった.

■写真左
ゴルジュ終了
8:15

■写真右
穏やかな沢の様子
■写真左
流木が積み重なっている左俣


■写真右
(左俣の)左から入る支沢
■写真左
(左俣)左支沢8m滝


■写真右
(左俣)2段6m滑滝
9:00
 右には2段の滑滝があり、直登は童心に返りなかなか楽しい.幾つか小滝を越え中央に流木を抱えた3段の滝があった.はじめ、2段かと思ったが最上段がやや右に屈曲していて下からは良く見えない.右の岩場をよじ登って3段と判った.この滝の上、V字谷は一瞬穏やかになるがすぐに岩を積み上げ高度を上げていく.水量はやや衰えたかにみえたが、下段で3状に分かれる苔の生えた滝辺りでは、復活していた.しかし、それも僅かな距離で左に急傾斜の涸沢を見送ると、水は減少していく.両岸とも沢床から5〜10m上部まで樹木がなくザラザラとした崩れやすいV字斜面になっている.こうなると沢(水流の中)の方が歩き易い.帰り(下り)の事も考えずにぐんぐん遡っていくが、下降ではちょっとおっかない場所も2−3箇所登ってきてしまった.ザイルは持ってきたが、渓を良く見ると支点などまるでない.「しまったな・・・」と思いつつ、ままよ!とばかり上流に向かう.
■写真左
流木を抱えた3段12m位


■写真右
苔が生えている2段6m
■写真左
源流状になり高度を上げていく
10:15


■写真右
尾根に向かって急斜面を直登
 土まみれの残雪が渓を埋め尽くしている場所に出た.左の斜面が洗われている様になっているから、此処で雪崩が起きたのだろう.注意深く越えると階段状にせりあがる沢に2m程のハングしている滝があり、ザラザラ足元から崩れる斜面に苦労しながら巻いて上に立った.下流を眺めると、かなり高度感があった.こりゃー、帰りはきついな〜・・・と再度枯れ頭を悩ませたが仕方がない.取り敢えず上まで遡ってみるか、と一向に懲りない. 飴をほおばり、上流に向かうと再び残雪が渓を覆っていた.(1000m付近)

 両岸とも似た様な急傾斜で地図の高度差も同じ様なもの.ただ左岸は中間尾根なので戻る場合は二俣に下りられる.此処は左岸尾根に登る事にした.はじめは藪もなく掴まる木もまばらなので登りづらい.斜面を半分程登った辺りから薄い笹藪になり、掴まりながら登るので多少楽になった.尾根に登り着くと残雪が多く笹は粗い畳の様に倒れている.きつい登りでかいた汗を拭きエネルギーを補給しながら「よしッ 明神ヶ岳に登って行くか.滝の写真はもう少し緑の季節が良さそうだ」 などと適当な理由をくっつけ右俣探索計画を簡単に変更.ま、一人だからお気楽なのよね(笑)
 天気が良く気温の上昇で表面は緩くなっている.それでもゆっくり足を置く事でそれほど沈まない.多少時間がかかるのはやむを得ないが、雪の中に膝まで沈むと体力の消耗が倍加されるのであとで余計に時間がかかってしまうだろう.輪かんを持ってこなかったので壺足だ.等高線の広いところから狭い場所、つまり急斜面にさしかかると雪が所々消えているが雪が積もっている所との段差があるので(雪面に)乗ったり降りたりはやはりしんどい
 あえぎながら尾根分岐に近づくと左から合流する尾根付近に赤と黄色の標識があった.向こうには登山道でもあるのか? と、幾分緩やかになった分岐に登り着く.
 しかし、そこも雪に覆われ踏み跡も見えない急斜面だったが、これまで登ってきた尾根とは違いテープも施され安心を導いてくれる.やがて、日向明神(1519p)に着くがこのピークは結構深い残雪があった.祠とか、標示板とかは何もないようだった.時刻はお昼を過ぎているので此処で昼飯にしようと、西側の雪が消えている笹斜面に腰をおろしサンドイッチをほおばる.
■写真左
残雪が多い尾根
11:00


■写真右
尾根分岐到着
11:50
■写真左
まだまだ続く尾根の急登


■写真右
日向明神
12:20

■写真左
稜線途中の展望


■写真右
明神ヶ岳
13:35
 日向明神から明神ヶ岳への稜線歩きでは、東、西方向が開けた所があり、日光連山などの眺めが良い.急斜面に差し掛かると雪はなく注意深く下降し膝下の笹原の鞍部は日差しもあって気持ちが良い.広い笹尾根を登ってピークを一つ越え明神ヶ岳頂上に着いた.
 頂上は日向明神と違い雪は少なかった.三角点と有志の山名標識板が幾つかあり、周囲は雑木に覆われ展望はない.南西方向の樹木にテープがあり、踏み跡が下りていた.爺の持っている資料では「石祠があった」と記述があるが、見あたらなかった(見逃したかも).
 さて、此処から戻ろうかどうしようか思案した.あの、残雪のおまけ付き急斜面(日向明神の下り)はやや意気消沈させる.1100P〜1001Pへ辿る事も検討したが、それより日向明神に登る途中で見た北方面の稜線が何となく歩き易そうだった.地図を見ると1574P(湯西明神)から一つ石集落(もう、ないかな?)へと続いているではないか.更に、その先950m辺りの尾根分岐をやや東南寄りに行けば、駐車地の一つ石バス停だ.湯西明神に1時間位掛かるとしてそこから3時間あれば県道に出られるだろう・・・(と、いい加減な計算).決まった.
 湯西明神への稜線はこれまでより残雪が多く.発達した雪庇が残されていた.雪の上はそれ程沈まず概ね歩き易いが、所々雪庇に亀裂があり怖いのでなるべく左寄りを歩いた.雪が灌木を押し倒し開けている場所では展望が良い.眼下に新しい湯西川ダムが見える.石楠花も出てきたが、雪の中なので邪魔される事はなかった.概ね予想時間通り1574P(湯西明神)に着いたが、どこがピークか判然としない.山名標識なども見つからなかった.
■写真左
残雪の様子


■写真右
雪庇
■写真左
湯西明神だと思うが・・・
14:35

■写真右
振り返って望む明神ヶ岳
 尾根を東寄りにとり下降していく.(標高差)50m程下った所で、残雪の上に古い足跡があるのが判った.足跡としての形はほぼ消えているが、踏んだ所が固くなって浮いているのだ.誰かが下から登っていたらしい.ラッキーな事だ.テープなど見当たらないので、尾根の分岐で方向を間違わないか心配だったからだ.順調に下降を続けていると、樹林が突然切れ北側、南側の大展望になった.1370m付近である.北に雪を抱いているややボコボコした山は荒海山だろう.県境の山々がくっきりと浮かんでいる.南は、近くは湯西の山々が、遠くは・・・名前がよく判らないが沢山(笑).先程登った日向明神とその厳しい登り.明神ヶ岳も少し遠くなって見えた.
 1300m辺り、此処にもモノレールの使い残しがあった.山の中を歩いていると時々こういうのにお目にかかる.山で食べてる(利益を得ている)会社は、終わったら撤去するのが義務だと思うけど、山が好きだということと、ビジネスだから手間暇かけて儲からない事はやらないってか.両側の展望を楽しみながら、そんな事を考えつつゆっくり下降を続ける.
■写真左
1383Pからフリウギ沢方向を遠望


■写真右
モノレール跡
■写真左
画像の向こうから下りてきた
左の樹林内に突入



■写真右
無事到着
16:15

◆下の画像 上左:荒海山 上右:高原山
下左:日向明神 下右:左俣左支沢にある滝
モノレールの脇を調子よく下りて行くが、1290m付近の尾根分岐で東南に下りてしまった.鹿道に引きずられてしまったのだ.それまで膝上だった笹藪は腰辺りまでとなり、そう大きくない植樹林の切れ目から左手(北東)に下りるべき尾根らしいものが見える.あわてて地図を見、GPSを確認すると、やはり間違えていて、このまま下降すると最初に見た「右支沢滝」がある所に出てしまう.まあ、そこに下りてもさほど問題なく帰れるので大きな間違いではないのだが、まだ(標高差)50m程下りただけなので戻る事にしたが登り返しは辛かった.
 その後は雪もほとんど消え、モノレールの左右にある踏み跡を順調に下りていく.北東に向かっていた尾根は真北に折れ、このままモノレールと同じ方向に行くとフリウギ沢に下りてしまう.一つ石へは東に分岐する尾根を下りなければならない(後で知ったが、烏が森さんは此処をフリウギ沢方向に歩いたらしい).
 この辺り、西方向は広葉樹林帯で見通しは利くが、東方向は(桧?)植樹林でそれ程大きくないから美味しげった葉が視界を遮っている.此処はGPS頼みで”エイッ”とばかりに葉を掻き分け樹林の中に入って行く.周囲の状況だけではどういう地形を下りているか判らず、GPSの画面を見ながらゆっくり下りていくが、1150m付近で東北寄りになっているのをトラバース気味に下降し修正.バラ系ブッシュに悩まされながら我慢して下降を続けると、1030m付近で突然踏み跡をみつけた.テープも一定間隔で付けられている.後はその踏み後を辿り無事一つ石バス停に降り立つ事が出来た.