◇沢偵察◇
那須塩原市
木の俣川へ
2010年8月21−22日 訪問
単独
(時間は参考にしない事)
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木の俣川の上流部探索を行ってから約1年が過ぎた.その探索では長い本流往復に一日かかり、支沢に於いては興味を沸かせるものが幾つか出てきたが、出合付近のみしか見る事が出来なかった.険しさはないが、とにかく長い沢なので時間がかかる.その支沢に辿り着くまでもしかりなのだ.今回も天候と仕事を睨みながら、3日間休みがとれないか画策していたが、これは駄目で好天の2日間がやっとだった.これでは、行って帰るだけで精一杯.沢の探索にあまり時間がかけられない.支沢の2本くらいがいいところだろう.
前回の探索で、標高1050m付近で大佐飛山に突き上げる沢の出合付近に良い滝があった.今回はそこを目標にしようと計画.テン場は一泊だから出来るだけ上流の方が良い.時間がかかる沢(本流)の遡行を止め、これも長いが塩那道路を使ってみる.問題は下降点だ.重い荷物を背負っての急斜面は辛いし危険だ.が、緩斜面は藪が凄いだろう.しかし、机上であれこれ不安材料ばかりあげていても仕方がない.
午前6:45分、塩那道路のゲートを出発した.しばらくは舗装された立派な道路を歩く.あまり日影がないので暑くすぐに汗が噴き出してきた.白い雲が僅かにある空は青い.百村山から黒滝山に連なる稜線が綺麗に見える.
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■写真左
P地から眺めるくっきり稜線
6:15
■写真右
立派な舗装路だぞ
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■写真左
林道からの景色遠望(どこら辺からだっけ?)
■写真右
道路工事の機械
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舗装が終わり、砂利道になるが歩き易い.何か工事が行われているいるらしく、土木機械やプレハブの現場事務所などがあったが、時間の早い事もあって、作業はまだだった.「殉職碑」に手を合わせ、「本部跡」で休憩をとり水を飲む.「熊の巣岩」はどれだかよく判らず、「ダルマ岩」と描かれた標識がある辺りでは、2台のライトバンが追い抜いて行った.工事業者の車の様だ.この上の方で何かの工事が行われているのだろうか.ゲートには、立入禁止の看板があったが、特に咎められる風でもない.
単調な林道歩きであるが、所々開けた所があり景色が良い.木の俣川を覗くとガスがまるで渓に積もる雪の様に覆い被さっている.それが、上流から下流へと移動していくが、意外にスピードが早い.
標識は一部見落としがあったかもしれないが、「見晴台」、「露の沢」、「石楠花岩」、「貫通広場」と出てきた.この貫通広場迄、板室から13.5kmとある.確か、ゲートまで3.5km位とあったからもう10km歩いた事になる.塩那道路も結構時間が掛かるものである.そこから更に1時間程歩き、(地図で)1412.4m三角点下方の東南尾根に着いた.
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■写真左
遠望です
■写真右
木の俣川下流方向にかかるガス
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■写真左
下降予定地点に到着
11:00
■写真右
沢形に降り藪から開放される
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下降点と考えた左斜面は案の定、笹の激藪である.此処から2−30m下に沢形がありそこへ抜ければ藪は少し減るだろうと検討をつけていたので、深く考えもせずトレッキングシューズから沢靴に履き替えた.スパッツを着け、ザックの突起物をザックカバーで隠し肌の露出をなくして(最低限の)笹藪漕ぎに備えた.トレッキングシューズは林道の脇にデポしておく.
チシマ笹の藪は思ったよりも凄い.突入してすぐに密になり方向も視認出来ない程だ.ただ、殆ど斜面の下に向いているので泳ぐ様に下りていける.中々捗ったが、実はこれが曲者.帰りはどうなるの?・・・と、不安が涸頭をよぎったのはかなり降りた後だった.
笹に埋もれているのか沢形も見つからない.下降にそれ程困難でもないのでさらに降りていくと笹の切れた斜面に出る.地面に僅かだが水が染み出ている.沢に出たのだ.やっと藪から開放されたが、長いと思った時間は25分程過ぎていた.
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■写真左
涸沢の様子
■写真右
水が湧き出している(かなり美味しい)
13:00
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■写真左
木の俣川本流(下流方向)
■写真右
テン場
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沢は急だが水が無く涸滝も1ヶ所あっただけで、下降に難しい所はなかった.暫く下降し緩やかになってからも水は出てこない.沢以外は藪になっているので岩石が多く歩きづらいが、沢を下りて行く.二俣に出ると、左から合流している沢には僅かだが水が流れていた.大量の湧き水が出て、沢らしくなったと思ったら木の俣川の本流に出た.この支沢の湧き水は美味しかった.下降し始めてから本流に着くまで2時間を要してしまった.と言う事は、出発して既に6時間半も経過している.本流の遡行とあまり変わらない様に思え、何だかがっかりしてしまったが、とにかく本流に下りて清々しさがあり早速テン場探しとした.
昨年、此処を通った時良い場所があったのを確認している.下降した沢の出合いから100m程上流に平らな場所がある筈.そこまで行くと、柔らかい草がベッドの役割をして特に整理しなくても快適なテン場だった.取り敢えず荷物を置き、エネルギーを補給し下流の直角に曲がる場所に行ってみる.此処には左岸から綺麗な滝をかけ、沢が合流している.滝は結構水量が多く迫力的だったので、期待したが何と言う事か水が極めて少ない.そう言えば、本流の水も昨年と比べて少ない様だ.
到着早々期待を裏切られた様でやや気落ちしたが、今夜寝る場所を造らなければならない.早い内に火をおこし、濡れたものや泥が着いて洗ったものを乾かしながら、ターブとツエルトを張りブルーシートを敷いた.焚き火の前で食事の支度をしていると、5−60m上流で猿のグループが左岸から右岸へ移動していた.12−3匹位か、時々立ち止まってこちらを見ている.手を振ってみたが、何の反応も示さずその後ゆっくりと右岸の樹林に消えていった.
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■写真左
下流右支沢の滝
カーソル置くと昨年の時
■写真右
えて吉さん
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■写真左
地図に水線のある上流左支沢
(翌日)7:45
■写真右
CS8m
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翌朝、朝飯をお腹に入れ上流を目指す.地形図に水線のある沢出合いに着いたが、あまり水がない.苔が生えた岩がゴロゴロ積み重なって勾配をつけいている.どうしようか迷ったが一応後悔するといけないので簡単に遡行してみる.出合いは藪沢風だが、沢に少し入るとゴーロになり、藪はない.岩に着いた苔を良く見ると、何かが踏んだ後がある.左岸が多少藪っぽいが鹿などはそこを通るだろう.熊、猿もしかりだ(と思う).すると、藪を嫌う人間かも知れない.長靴だったり、沢靴だったり.特に段差のある(苔の付いた)岩で見られた.この沢は1673mピークに突き上げている.
連続する小滝を登って行くと、CS8mがあり大岩が通せんぼの様に鎮座している.右を登り大岩の上に出ると、水はなくなり涸れ沢になった.標高1100m近くまで遡行し、あまり時間もかけたくないので引き返した.
本流を遡り、綺麗な滝のある左支沢へと向かった.もう少し近いと思っていたのだが、意外に時間がかかる.1時間位かかってやっと左支沢の出合に着いた.心配した水量は前回程多くはないがまずまず.数枚撮影して左の小尾根に取り付いた.少し登ると笹がうっとうしい.薄い所を選んで登って行くが、その内濃い藪になってきた.
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■写真左
水が涸れ、上流は藪か?
8:15
■写真右
木の俣川本流
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■写真左
左支沢の綺麗な滝
9:25
■写真右
小尾根に登り滝の上流を見る
中央白っぽいのが滝
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滝の方に移動してみると、滝の上部に更に滝が続いているのが見えた.その奥にも白い縦筋が確認できる.滝の左側も右側も急な崖.トラバースして、滝のすぐ左の小尾根に回れそうな場所もあるのだが、ザイルがないとこの尾根から滝左急斜面に降りる事は出来そうもない.この尾根を登って回り込むしかなさそうだ.
再び藪に入って登っていく.問題はテン場へお昼頃には戻らなければ、今日中に帰れない気がする.林道直下の猛烈+激藪が待っているのだ.不安を背負いながら、笹藪を登って行くがさらに密になりさっぱり捗らない.時間もどんどん過ぎていく気がして焦ってくる.低木に足を取られ横に倒れたのをきっかけに、引き返す事にした.あと2−30m程登れば滝左急斜面の上に出られたかも知れない.残念だが仕方がない.
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■写真左
帰路、滝のある左支沢から500m程下流の右支沢出合付近にある滝
11:45
■写真右
テン場から帰路の涸沢
14:45
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■写真左
背丈の高い笹
■写真右
猛烈激藪、目線でみると・・・
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昼食は、インスタントラーメンに残った食パンを入れて食べた.中々の美味しい.だからと、家で同じようにして食べても、なんだかなー、、、なのである.環境とは不思議なものだ.テン場を撤収し、昨日下降してきた沢を登って行く.予定では正午に遡る筈だったが、時刻は13:00を過ぎていた.塩那道路では暗くなるだろうが、歩き易いので問題はないだろう.最大の難所はあのチシマザサの猛烈激藪である.本流を下る事も考えたが、車の回収が大変なのでパス.「よしっ、行くか〜っ」と声を出して沢に入って行く.
湧き水でボトルを満タンにし、急がず遡って行くがペースが早い.もう少し体力温存を・・・と自分に言い聞かせ、ゆっくり登る事に努めるが沢が短いせいか結構捗る.ゴーロ帯を過ぎ、細い急傾斜の涸れ沢を登り詰めるといよいよ強烈な笹藪出てきた.目の前にビッシリとステッキより太い茎に溜息が出てしまうが行くしかない.なるべくまっすぐ斜面を登る様に心掛ける.そうすると笹を掻き分けながら進む事が出来る.一旦十字砲火(って本での知識だが)に会う様に、身体や足に絡まってしまったら、それを外したり押しのけたりするのは見事に困難を極める.
笹の中で頭上を見上げると、笹の葉が(一般)住宅の天井付近の高さだ.この笹、背丈どころではなく3m位ある.回りの景色は全く見えず、緩斜面の中で自分が果たして林道に向かっているのかどうか不安だった.鹿道もない.GPSで確認し、(道路まで)わずか50m程の近さにいるのに、である.進行速度は極めてのろい.GPSだけが、徐々に(道路に)近くなって行く事を示し、ただまっすぐ登ることだけに全力を尽くした.(ともすれば、楽な下りや藪の薄い右とか左とかに変える欲求に負けそうになる).こんな所で遭難でもしたら、長い間みつけてもらう事は出来ないだろうなあ・・・等と思い、苦笑しながら笹と格闘する.
体力を使い果たしヘロヘロになりながら(17:10分)林道に飛び出した時には、道路に倒れ込んだ.どっかの星の強い重力から解き放された気分になり、これから4時間半の林道歩きが待っているというのに、帰り着いた気分になってしまった.水を飲みエネルギーを補給.ゆっくり休み体力が少しづつ回復してくるのを待って、デポしておいたトレッキングシューズに履き替え車のあるゲートへと長い道のりを歩き出した(17:30).途中暗くなったが、月が澄んだ空に明るく道路はヘッデンなしでも歩ける程.やはり、一泊では無理だったか、又来なきゃならないな、、、等思いながら足を前に運ぶ.時々小動物が前を横切るので、初めて鈴を身につける.舗装道路に入ると、前方に街の灯がまるで空の星の様に輝いて見えた.(帰りは結構早く20:45分に着いた)
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